研究概要 |
本研究にたいしての科学研究費の援助により、立体構造物のフラクタル次元計算プログラムを、ライズ社に特別注文し作成した。そのプログラムを用いて、ヒト正常肝5例と肝細胞癌5例について検索を行った。 その結果、 1.正常肝と肝細胞癌の類洞の立体構造は、ともにフラクタルであることがわかった。すなわち、類洞の複雑な立体構造を、フラクタル次元という指標により定量化し、比較することが可能となった。 2.それぞれの症例におれるフラクタル次元は、正常肝では、2.22、2.16、2.17、2.20、2.17(平均2.18±0.03)、肝細胞癌では、2.24、2.31、2.12、2.17、2.20(平均2.20±0.07)になった。 3.求めた類洞のフラクタル次元について、t検定を行ったところ、正常肝と肝細胞癌の平均値の間には有意な差はなかった。しかし、両対数グラフにプロットされた点に、最小二乗法を用いて求めたフラクタル次元に関して、t検定を適用することの適否については、物理学者の間でも異論のあるところである。 4.同時に行っている研究(トポロジーを用いた類洞の立体構造の定量化)では、正常肝と肝細胞癌との間に有意な差がみられいてる。 5.以上の成果は、学術図書『医学・生物学におけるフラクタル』(松下貢編著,朝倉書店,1992)のp.112-127(清水英男:正常肝臓と肝細胞癌の類洞(微小血管網)の立体構造-フラクタル次元と1次元ベッチ数による比較)に発表した。
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