Microcystis aeruginosaより分離した毒性無菌株(K-139)の菌体から7-desmethylmicrocystin LR(以下MC)という毒素を分離精製し、cytokine誘導能について検討した。マウス腹腔にMCを投与すると1時間後に血中IL-6が現れ、3-4時間で約80-100U/mlになった。In vitroでマウス腹腔マクロファージにMCを添加した実験でもIL-6誘導が認められた。IL-10を予め投与しておくと、このIL-6の上昇が抑えられるだけではなく、マウスの生存率も上昇した。また抗IL-10抗体投与マウスのMCによるLD_<50>は低下した。マクロファージの培養上清中、並びに肝細胞培養上清中のIL-10濃度をサンドイッチELISA法で測定した。その結果、MC100ng/mlにより刺激されたマクロファージから24時間後に10^4pg/mlのIL-10が確認され、培養肝細胞からも10^3-10^4pg/mlのIL-10の産生が確認された。以上よりMCによる鬱血、出血を主体とする肝障害は、IL-6、IL-10が関与するcytokineネットワークの破綻が寄与する可能性を明らかにした。 次にマクロファージを使って毒素による活性酸化窒素(NO)の誘導能を使って調べた。その結果、in vitroで刺激12時間で上清中に10-20nMの活性酸化窒素が検出され、MCはマクロファージからNOも誘導できる事が確認された。 またMCに対するモノクロナール抗体の作製を試みた結果、数種類の抗体の精製に成功したが、毒性株と無毒性株との間で交差反応を示した為、両者スクリーニングに用いる事はできなかった。しかし、生物活性としての作用を検討したところ一部にMCの毒性に対して充分中和活性をもつ中和杭体であることが明らかになったので、現在この抗体を使って解毒機能の解明に取り組んでいる。
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