デフェンシン(カチオニックペプチドとも呼ばれる)は、好中球の顆粒内に存在する殺菌性ペプチドであり、グラム陽性菌、陰性菌のみならず真菌、ウィルスに対して広い抗微生物作用を示す。さらに、難治性感染症を繰り返すChediak-東症侯群や好中球の顆粒欠損症においてデフェンシンの低下が認められることから、デフェンシンは生体の感染防御反応において重要な役割を果たすと考えられている。しかし、これらの疾患が、どのような異常によっておこるのかまだ明らかにされていない。そこで、本研究では、正常の骨髄細胞におけるデフェンシン遺伝子の発現機構を検討し、それがデフェンシン異常症においてどのように変化しているかを解析することによって、デフェンシン異常症の病態の解明を試みた。 まず、骨髄細胞のなかで、どの細胞が、どの段階でデフェンシンのmRNAを発現するかをin situ hybridization法で検討した。その結果、デフェンシンのmRNAは、myeloblastではわずかにしか認められないが、promyelocyteやmyelocyteに分化するとほとんどの細胞がmRNAを発現するようになることがわかった。しかし、metamyelocyteに成熟するとmRNAは減少し、さらに好中球に成熟するとmRNAはほとんど見られなくなることがわかった。これらの結果から、デフェンシン遺伝子は、好中球のある限られた成熟段階でのみ発現されることがわかった。さらに、デフェンシン遺伝子を単離し、その構造を明らかにしたところ、デフェンシン遺伝子は3個のエキソンから成ることが分かった。また、5'上流領域にglucocorticoid regulating elementが存在することから、デフェンシン遺伝子の発現は、glucocorticoidによって調節される可能性が考えられた。今後、さらにデフェンシン遺伝子の転写調節機構について検討するとともに、デフェンシン異常症について解析していきたい。
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