デフェンシン(カチオニックペプチドとも呼ばれる)は、好中球の顆粒内に存在する殺菌性ペプチドであり、グラム陽性菌、陰性菌のみならず真菌、ウイルスに対して広い抗微生物作用を示す。今までの研究から、デフェンシンは骨髄の未分化な好中球によって産生される可能性が示されているが、デフェンシンの遺伝子発現が好中球の成熟過程でどのように調節されているかまだ明らかにされていない。そこで、本研究では、デフェンシンの遺伝子発現機構について検討した。 まず、デフェンシンのcDNAを検索したところ、デフェンシン(CP)-1と-2に対して3種類のcDNAが得られ、デフェンシン-1と-2が複数の異なる遺伝子によってコードされる可能性が示唆された。実際、デフェンシン遺伝子を単離したところ、4つの遺伝子クローンが得られ、それぞれ2つがデフェンシン-1および-2遺伝子の対立遺伝子であることがわかり、その可能性が確かめられた。また、デフェンシン遺伝子のプロモーターについて検討したところ、転写開始部位の上流約400塩基にプロモーターが存在し、デフェンシン-1遺伝子のほうが-2遺伝子よりも2倍強いプロモーター活性を示すことがわかった。さらに、in situ hybridizationによって骨髄細胞のなかでどのような細胞がデフェンシンのmRNAを発現しているかを調べたところ、前骨髄球、骨髄球はmRNAを発現するが、成熟好中球、単球-マクロファージ系、リンパ球系、好酸球系の細胞はmRNAを発現しないことがわかった。これらの結果から、デフェンシンは、複数の異なる遺伝子によってコードされ、それらの発現は骨髄での好中球の成熟過程において転写レベルで調節されていることがわかった。
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