研究概要 |
CO-Hb,cyt.aa_3-CO,cyt.aa_3-CN複合体の組織内分布を近赤外イメージングにより定量的に把握するための基礎検討を行った。生体組織の光学特性をシミュレートするためのモデルファントムとして、最初に散乱係数・吸光係数が既知のラテックス粒子エマルジョン+近赤外色素を満たした円筒型ファントムに種々の大きさの光学的黒体を挿入し、位置検出能・空間分解能を評価した。ついで、より実際の生体に近いファントムとして、ラテックス粒子エマルジョンにラット赤血球・肝ミトコンドリアを懸濁させ、同様の計測を行った。 以上の結果、空間分布を伴わない近赤外生体測光法と同様、近赤外イメージング法においても、各種Hb複合体・cyt.aa3複合体の定量計測が原理的には可能である事が示されたが、Hbの酸素化-脱酸素化に伴う吸光度変化に比べ、CO-Hb,cyt.aa3-CO,cyt.aa3-CN複合体の生成に伴う吸光度変化は大幅に小さく定常光を用いた近赤外イメージング法ではその空間分解能はラット頭部を四等分した程度しか得られない事が明らかとなった。 この空間分解能は、我々の目的であるCO・シアンの生体への複合作用の検討には不十分であるため、近年、光散乱体中を通過してくる光のうち直進光もしくはそれに近い光成分のみを選択的に検出可能な手法として提案されている、ピコ秒時間分解測光法の適用を試みた。前述のモデルファントムを用いて同様の計測を行った結果、ゲート時間を数10ピコ秒程度に選ぶ事によって、数倍以上の空間分解能が得られる事が示された。その反面、計測系の直線性の限界・検出される光量の激減に伴うS/N比の劣化などにより、定常光を用いたイメージング装置に比べ、計測の精度は大幅に悪化した。しかしながら、この問題は、装置特性の改善により比較的容易に克服可能と考えられ、本研究における今年度の予定課題であった。実際の生体計測に先立つ計測条件の設定という目的を達し得たと思われる。
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