研究概要 |
重金属損傷発現における活性酸素の関与を明確とするため,過酸化水素に耐性能を有する細胞株を用いて,6価クロム,カドミウム,水銀による細胞毒性およびDNA損傷について親細胞株と比較検討した.その結果,(1)カドミウム,水銀による細胞毒性の発現は,親細胞株と比較して,過酸化水素耐性株において有意に低下するが,6価クロムでは両細胞間において全く同様であった.(2)カドミウム,水銀および6価クロムによるDNA切断の生成は,過酸化水素耐性株において有意に低下した.(3)過酸化水素耐性株における細胞内の5価クロム生成は低下する.(4)これら重金属の細胞内取り込みは,両細胞間で変化はしない. 以上の結果をまとめるとカドミウム,水銀による細胞毒性およびDNA切断生成には活性酸素が深く関与するが,6価クロムの場合には,DNA切断のみ活性酸素が関与することになり,細胞毒性については他の因子が関係すると考えられた.特に耐性細胞において細胞内5価クロム生成が低下した事実は,細胞内の6価クロム還元能が耐性細胞で変化しており,細胞内5価クロムが活性酸素生成,更にはDNA切断と深く関係する事を示している.現在,他の重金属損傷についても検索中である. 一方,6価クロムによる突然変異および染色体異常誘発に対する抗酸化ビタミンB_2の効果を検索したところ,細胞内ビタミンB_2の増加により,これら6価クロム損傷が増強されることが明確となった.つまり,ビタミンB_2は,6価クロムの発癌性を増強する可能性が示唆された.現在,他の抗酸化剤の重金属損傷に及ぼす効果について検索中である.
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