研究概要 |
大阪府立の高校195校の生徒210,298人について平成4年度に実施した尿検査結果を分析した。1次検査,2次検査の結果医療機関において精密検査が必要と判定された者は4580人いた。このうち1101人は異常なし、1089人の者については1992年9月末までに結果が得られなかった。残りの2390人について分析を行った。これらの者の診断判定はWHOの腎疾患の臨床症候群分類に準じて行なった。症候群の分布は、慢性腎炎症候群の35%,蛋白尿・血尿症候群の44%が主なものであった。腎疾患の判定のあった者の55%の者は、今回はじめて異常を指摘されたものであった。新規の者の割合が高かった疾患は,急性腎炎症候群の58%,蛋白尿・血尿症候群の76%,尿路感染症の84%などであった。腎疾患の有病率(対千人)11.4であった。症候群別には慢性腎炎症候群は400人であった。管理指導区分がC以上の者の71%は慢性腎炎・ネフローゼの者であった。IgA腎症の者は86人であった(対千人0.43人)。腎疾患のため昨年1年間入院歴のあった者は41人,今回の検尿の結果「要休学」となった者は13人であった。発見された腎疾患の者のうち39%が慢性腎炎またはネフローゼ症候群の者であった。これらの者の8割は今回の検尿を行なう前から管理されていた者であった。これらのことから,慢性腎炎およびネフローゼ症候群の早期発見という点では高校生になってからでは遅いことが示唆された。高校生においては発見されている腎疾患を管理していくことが重要な課題であると考えられた。今回の研究にあたって管理指導区分を作成したが,その管理することによる重症化予防などの効果の評価にまで分析がいたらなかった。しかしながら,高校生の腎疾患の実態を明らかにすることができ,また尿検査結果に基づき管理していく判定基準を作成することができた。本研究の結果,腎疾患の予防のためには,小・中・高校を通じたシステムが重要であると考えられた。
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