我々は、当院を受診した慢性疲労症候群の多くの症例に、エンドトキセミアをきたす様な細菌感染や炎症などの所見がまったく見られないにもかかわらず、リムルス反応が陽性という今まで気付かれていなかった成績を見い出した。リムルス反応を陽性化させるカスケードは2つあり、1つはエンドトキシン(リピドA)にて代表されるC因子活性化物質で、他の1つはβグルカンにて代表されるG因子活性化物質である。CFS症例に見られるリムルス反応陽性化は、G因子を含まないエンドスペシー検査の陽性率が低いことより、エンドトキシンとは異なりG因子活性化物質と思われ、かつCFS症例には真菌感染症などを疑わせる成績が全く見られないことよりβグルカンとも異なる物質と考える。そこで、CFS患者血漿をカラムクロマトグラフィーなどにより活性化物質分画を明らかにすべくその単離・精製を試みているが、従来我々が採用していたリムルス反応を阻害する物質の除去法(PCA法)では、蛋白結合型の活性化物質自体を除外してしまう可能性が考えられた。そこで、現在阻害物質の除去法として熱希釈法を採用し、各フラクションごと活性化物質について検討を行っている。また、我々はCFSの多くの症例に脱力や筋肉痛、運動後の倦怠感を認めることより、筋組織におけるエネルギー代謝に重要な役割をはたしているカルニチンについて検討を行ったところ、CFS症例では血清中におけるAcylカルニチンが有意に低下していることを見いだした。いままでに報告されてきたカルニチン欠乏症は、そのほとんどがfreeのカルニチンの減少によるものであり、この血清中におけるAcylカルニチンの減少がどの様な病態と結び付くのかはこれからの研究が必要であるが、このAcylカルニチンの異常を介したエネルギー代謝の異常が脱力や筋肉痛、運動後の倦怠感などの臨床症状と関連していることが考えられ、さらに詳細な検討を行っている。
|