【研究目的・方法】動脈硬化性、高血圧性血管病変におけるファイブロネクチン(FN)、細胞増殖因子の役割を解明する目的で研究が段階的に施行されているが、今年度はその第二段階として食塩感受性ダールラット(DS)、高血圧自然発症ラット(SHR)およびウイスターキョウトラット(WKY)を用いて、レニン-アンジオテンシン系の阻害が血圧および血管壁FNの発現におよぼす影響を検討した。血管壁FNの発現はNorthern blot法にて分析した。 【研究費の使途】上記の実験を施行するため、研究費の多くを動物購入飼育費用、ノーザンブロット用消耗品の購入費用に充当した。また、動物の血圧測定に際し助手を必要としたため、動物実験助手の謝金に研究費の一部を使用した。 【今年度得られた結果】DSにおいては、アンジオテンシンII_1受容体拮抗薬(TCV-116)投与およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬(エナラプリル)投与により、有意な血圧の下降および大動脈壁FNmRNAの変化を認めなかったが、SHRおよびWKYにおいては、TCV-116投与群およびエナラプリル投与群は対照群に比し、有意に収縮期血圧が低く、左心室重量/体重比、大動脈重量/体重比が小であった。大動脈壁FNmRNAの発現レベルは、TCV-116投与およびエナラプリル投与によりSHRおよびWKYいずれにおいても減少した。 【総括】DSにおいては、血圧の維持および大動脈壁FNmRNAの発現調節におけるレニン-アンジオテンシン系の関与は少ないと考えられるが、SHRおよびWKY両系統においては、アンジオテンシンIIがアンジオテンシンII_1受容体を介して血圧の維持、大動脈FNの発現調節に関与し、高血圧性血管肥大の発症機序に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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