平成5年度には羊胎仔の心房ペーシングについて検討した。 〔目的〕羊胎仔における右心房ペーシングのペーシングレートと心拍出量および動・静脈圧との関係を明らかにする。 〔方法〕(急性実験) 妊婦羊(4頭)を腰椎および静脈麻酔し、開腹して子宮を切開し、胎仔の右頚部を露出した。これを皮膚切開し右内頚動・静脈を露出し、内頚動・静脈をカニュレーションし動脈圧と静脈圧をモニター開始した。次いで胎仔を右側開胸し、一時心房ペーシングリードを2本右心房に縫着した。ペーシングリードの他端を体外式ペースメーカーにつないだ。洞調律時(リード縫着後)と多段階的に頻度を変化させて心房高頻度ペーシング時の心拍出量を心エコー法を用いて測定し、ペーシング前後での心拍出量と動・静脈圧について検討した。 〔結果〕 1.ペーシングリードの右房への縫着は安全・確実に行なえた。 2.右心房は低電流でペーシングされた。 3.心拍ペーシング頻度は段階的に変化させると(刺激頻度250/分以上では)心拍出量は減少し、動脈圧は低下し、静脈圧は上昇した。 〔結論〕従ってこの方法・結果により、胎児の不整脈治療に胎内心房ペーシング導入の可能性が明らかになった。また、この受験系は胎児の頻拍性不整脈の実験モデルとなりうることが明らかになった。
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