前年までに、7例の末期担癌患者および3例の非ホジキンリンパ腫に対して低線量全身照射(一回0.1Gy、週2〜3回、総線量1.5Gy)を行い、末梢リンパ球サブセットの変化を調べたところ、ヘルパー、ヘルパーインデューサーT細胞分画の増加とサプレッサーT細胞の若干の減少を認めており、このことより低線量全身照射が抗腫瘍性の点からみて細胞性免疫系に対して有益な効果を与える可能性のあることが推察された。今年度は非ホジキンリンパ腫の新鮮症例9例に対して、2例に半身照射、7例に全身照射を行い従来通りのリンパ球の2カラー分析によって細胞性免疫に対する影響を調べた。また全身照射の7例の内、全身照射を先行させた3例においては、低線量全身照射単独での抗腫瘍効果を調べ得た。その結果、リンパ球サブセットの変動においては前年までと全く同様に、ヘルパー、ヘルパーインデューサー、活性化ヘルパー/インデューサーT細胞分画に統計学的に有意な増加を認めた。一方サプレッサーT細胞分画には減少傾向を認めたため、ヘルパー/サプレッサー比は有意に増加した。この照射の骨髄に対する影響であるが、赤血球以外の血球では全例に減少傾向を認めたが、白血球において2000/mm^2以下となったのは1例のみで、血小板は全例10万以上を維持していた。すなわち、低線量全照射は有意な骨髄抑制を起こすことなく細胞性免疫を賦活すること判った。全身照射を先行させた3例では、この照射のみで2例にCR、1例にPRの効果を認め、低線量照射単独でも抗腫瘍性のあることが示唆された。CRになった1例は64才男性で、diffuse large cell(Tcell type)の3期症例で、右扁桃、両側頚部、両側鼠径部に最大2.7x2.3cmのものを含む多発性のリンパ節腫大を認めた症例である。低線量全身照射後全てのリンパ節腫大は消失し、ヘルパー/サプレッサー比は1.64から2.76までに増加した。
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