研究概要 |
現在までに54例を悪性腫瘍に対して低線量全身(体幹)照射(以下1-TBI等)が行われた。内訳は非ホジキンリンパ腫新鮮例17例、再燃例17例および固形癌その他が20例である。このうち1-TBI等単独での抗腫瘍効果が評価できる、1-TBI等先行例が、非ホジキリンパ腫11例、再燃例12例、固形癌その他11例であり、固形癌の効果判定基準による奏効率(PR+CR)は、それぞれ82,17,27%であった。非ホジキンリンパ腫新鮮例に対する効果はきわめて良好であるが、再燃例、固形癌その他ではあまり期待できない結果となっている。特に固形癌その他のPR例3例のうち2例は、ホジキンリンパ腫と菌状息肉症でリンパ系の腫瘍であり、いわゆる固形癌に対する1-TBI等単独での効果はほとんどないと言える。また非ホジキンリンパ腫でも再燃例で効果のあったもの2例は2例とも以前化学療法が1クールのみ行われ1年以上後の1次再発のものであり、免疫機構が荒廃していないものと考えることができる。末梢リンパ球機能別サブセットでは、固形癌その他と非ホジキンリンパ腫新鮮例の平均値でヘルパー、ヘルパーインデューサー、活性化ヘルパー/インデューサーT細胞の分画に有意な増加を認め、何らかの免疫賦活効果のあることが示唆された。特に非ホジキンリンパ腫新鮮例に限るとその傾向が明らかであった。また非ホジキンリンパ腫I,II期の新鮮例で1-TBI等併用群とHistorical control群と比較したところ、I,II期ともに、全例でも、Intermediate grade以上でも1-TBI等併用群が有意に良好であった。以上の結果より、1-TBI等は非ホジキンリンパ腫新鮮例に対してはアジュバント療法として極めて有望と思われる。固形腫瘍に対する有効性は、現在進行中の局所照射との併用例の長期予後が判明するまで明らかではないが、非ホジキンリンパ腫新鮮例に対する効果、末梢リンパ球機能別サブセットの変化から予測するに、局所制御率向上、転移抑制に有効である可能性は捨てられない。
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