研究概要 |
今年度はさらに34例の患者に対し低線量全身(ないし体幹)照射(low dose total body(or trunk)irradiation:以下L-TBI)が行われ、現在までに89例となった。内訳は非ホジキンリンパ腫49例のうち32例は新鮮症例であり、40例は固形腫瘍などであった。症例がある程度集積されたため、今年度はL-TBIの適応症例の検討が可能であった。まずL-TBI抗腫瘍効果の評価できるL-TBI先行例(局所照射後でも転位巣など評価可能病巣のある症例も含む)は非ホジキンリンパ腫新鮮症例13例、再燃症例12例、固形腫瘍などで18例であった。その効果は、CR,PR,NC,PDが新鮮症例でそれぞれ2,9,1,1例、再燃例で0,2,4,6例、固形腫瘍などで0,4,9,5例であった。すなわち奏効率はそれぞれ85%、17%、22%であり、昨年までの結果同様、非ホジキンリンパ腫新鮮例に対しては大変良好であったが、再燃例や固形腫瘍でのL-TBI単独での効果は期待できない結果となっている。固形腫瘍などのPR4例のうち、3例はホジキンリンパ腫2例と菌状息肉症1例でいずれもリンパ系の腫瘍であり、いわゆる固形癌ではほとんど効果が期待できないと思われた。非ホジキンリンパ腫再燃例では昨年も述べたように、根治的な化学療法の行われていない、いわゆる免疫機構の荒廃していない症例のみでL-TBI単独の効果が認められる。NC,PDの症例は、2,3次以上の再燃例で、化学療法が何度も行われた症例であった。このような症例では、L-TBIは無効であるばかりでなく時に高度な骨髄抑制をきたしており、有害ですらあると言えるかも知れない。しかしながら、非ホジキンリンパ腫新鮮症例に対してはきわめて有効で、従来非ホジキンリンパ腫に対して行われている、化学療法+局所放射線療法に加えてL-TBIを行うことにより、より良好な結果が得られた。末梢血リンパ球のサブセット分画の解析では従来のどおりヘルパー、ヘルパーインデューサーT細胞の増加が同様に認められた。
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