肝移植後の門脈、肝動脈への血栓形成は致死的合併症である。本症を早期に発見し得る生化学的マーカーの開発を目的にして実験を行ってきた。 動物実験ではラットの門脈、肝動脈血流をクランプする肝血流遮断実験モデル実験で得られた血清を除蛋白処理した後、高速液体クロマトグラフィーにかけて遮断時間に対応して変動する物質が存在するか否かを検討した。その結果、肝血流遮断時間に極めて良く対応して変動する物質の存在が認められたので、このピーク部分を単離、精製した後、紫外吸収分析を行ったところ尿酸であることが判明した。また、同一検体の尿酸をウリカーゼ、ペルオキダーゼ法とHPLC法とで測定したところほとんど同一の結果がえられ、HPLC法で抽出された物質は尿酸であることを再確認した。 次ぎに、15分、30分、60分の肝血流遮断モデルを作成し血清中の尿酸値の変動を検討したところ尿酸値は遮断直後より直線的に上昇し肝血流障害の早期発見のマーカーとして有効であることが示唆された。対照として同時に測定したAST ALT LDHは肝血流遮断中には殆ど変動は認められず、かえって遮断解除後に大きな変動が認められるという結果が得られ、これらは肝血流による肝細胞障害の指標にはなるが早期発見のマーカーとしては有効性が低いことが分かった。 現在、人の肝切除術において肝血流を遮断した際のこれら諸物質の変動を検討中であるが尿酸値の変動が人においても有効なマーカーになり得ことが認められて来ておりデーターを蓄積中である。
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