実験動物として9匹の犬を購入し、安定した低酸素状態の作成を目標に、実験を行なった。犬の使用に先立ち既存の設備を用い、窒素ボンベと空気ボンベよりガスブレンダーを用い、混合気を調整し吸入酸素濃度を低下させるシステムを作成した。吸入気酸素濃度測定にて、酸素濃度が20.9%から30%まで任意に正確に設定できることを確認した。 次に犬を用い全身麻酔下に各種カテーテル類の挿入、心拍出量、血液ガスの測定、呼気分析による酸素消費量、炭酸ガス排泄量の連続モニター等の実験システムの調整を行なった。麻酔はペントバルビタール、筋弛緩剤はパンクロニウムブロマイドを使用した。 吸入酸素濃度20.9%の状態で、表面冷却により犬の体温を低下させた。体温測定はスワンガンツカテーテル先端の心房温で行なったが、実験時間は約8時間で、体温を37度より慨ね1時間あたり1度で30度まで下げた。体温が低下すると酸素消費量、炭酸ガス排泄量は低下し、これに伴い同じ換気量ではPaCO_2の低下を認めた。換気量を調節しPaCO_2を35〜40mmHgに保とうとすると、呼吸回数が著しく低下し呼吸循環動態への影響が懸念されることとなった。PaCO_2は30mmHg程度まで変動幅を許容することとした。 一匹の犬では、体温を30度まで低下させた後、再び復温し麻酔覚醒し動物舎に戻した。これにより低体温は安全に行なえることを確認した。現在は常温での低酸素状態の実験を開始する段階にある。
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