研究概要 |
本研究は、回復は可能であるが,積極的な呼吸管理によっても低酸素状態が回避できないような急性呼吸不全例に対し,低体温療法を行う際の至適体温に関する実験的裏付けを与えることを目的としている. 実験動物として計12匹の犬を購入し、体表冷却を安全に施行することと安定した低酸素状態の作成を目標に実験を行った.犬の使用に先立ち既存の設備を用い、空気ボンベと窒素ボンベよりガスブレンダーを用い、混合気を調整し吸入酸素濃度を低下させるシステムを作成した まず全身麻酔下に各種カテーテル類の挿入、心拍出量、血液ガスの測定、呼気分析による酸素消費量、炭酸ガス排出量の連続モニター等を行なった.麻酔はペントバルビタール、筋弛緩剤はパンクロニウムブロマイドを使用した.ガスブレンダーを用い、吸入酸素濃度を12%に低下させた状態で、常温で一時間、全身状態を観察した。次いで体表冷却により体温を低下させた.深部体温はスワンガンツカテーテル先端で測定した心房温でモニターしたが、実験時間約8時間で、体温を37度より概ね1時間あたり1度で30度まで下げた.体温が低下すると酸素消費量は低下し、酸素供給量は33度前後に一過性上昇を認めた. 平成6年度の実験では更に対象数を増やし6匹の犬で同様の実験を施行した結果,酸素の供給と消費のバランスは同じく32度前後(32.1±0.46℃,平均±標準偏差)で最高値をとった。この結果より至適低体温は深部体温で32〜33℃であることが示唆された。
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