研究概要 |
癌悪液質は、担癌患者にみられる羸痩を主とした代謝免疫異常状態であり、この代謝・免疫系の異常は癌による産生される生理活性物質により惹起されると考えられる。われわれは、ヌードマウスに移植すると著明な羸痩を来たすSEKI細胞がLIF(leukemia inhibitory factor)を産生することを報告した。今年度はSEKI細胞やcolon26をヌードマウスやヌードラットに移植し、末梢血像、骨髄像、サイトカインmRNAを検討した。その結果、正常では0.5-1%認められる末梢血中の好酸球分画が、SEKIやcolon26を移植したヌードマウスやヌードラットでは全く認められなくなった。さらに、ヌードマウスにschistosoma mansoniを感染させると、10週後には好酸球分画はほぼ10%と有意に上昇したが、colon26をヌードマウス皮下に移植すると、移植後3週間後にはほぼ0%にまで低下していた。同じ時期に非移植群では12%以上にも増加していた。 これらの変化がサイトカインの変化により説明出来るか否かを検討するため、SEKIまたはcolon26を移植したヌードマウスおよび対照群ヌードマウスの骨髄、脾、肝、肺、血液を採取し、各々からRNAを抽出した。RNAに逆転写酵素を作用させてcDNAを合成したのち、IL-1,IL-3,IL-5,IL-6,TNFそれぞれに対応するプライマーを用いてPCR(polymerase change reaction)を行い、電気泳動にてそれぞれmRNAを検出した。その結果は、移植群と非移植群との間にはなんら有意の差を認めなかった。 展望:SEKIやcolon26が担癌宿主の末梢血好酸球分画を低下させる物質を産生していることが明らかになってきた。今後、本物質の精製・同定を行いたいと考えている。
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