本研究において、人担癌状態におけるリポコルチン-1(LC1)の発現及び免疫反応に対する効果について解析をすすめてきたが、その研究成果を以下に述べる。 1.免疫組織染色により腫瘍間質内の炎症性細胞(主にマクロファージ)の胞体にLC1の染色性が得られた。2.FACSを用いた解析により、末梢血単核球中のLewM3、LC1両者陽性細胞の比率は健常人の約5%に対して癌患者は約20%と増加を認めた。(n=4)3.SDS-PAGEおよびWestern blotの結果、胃癌患者の腹水中から分子量37KDa、35KDaのLC1蛋白が検出された。4.健常人末梢血中から分離したリンパ球(2×10^5個/well)をMitogen刺激する培養系に、リコンビナントマウスLC1(r-LC1)を0.2、2.0、20μg/mlの各濃度で添加すると、そのDNA合成能はcontrolに比べ10%、90%、99%とr-LC1濃度依存性に抑制された。また、癌患者より採取した腹水や脾細胞培養上清をr-LC1の代わりに添加しても同様の抑制効果を認めた。5.この培養系にLC1抗ウサギ血清を添加すると、濃度依存性に抑制効果は解除された。6.進行胃癌患者末梢血中リンパ球のMitogen反応は健常人に比べ約30%低下していたが、nylon woolカラム処理でadherent cellを除去することにより健常人レベルまで回復した。 以上からヒトの担癌状態においてもLC1が産生されることが明らかになった。また、Mitogen反応に対しLC1特異的な抑制効果を示すことから、LC1は癌患者の免疫抑制に深く関与している可能性が示唆された。 癌進行に従いLC1はより強く発現されると推測され、癌進行度とLC1発現との関連ならびに血中LC1蛋白の定性について検討する予定である。
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