実験的検討: 【方法】ネンブタール麻酔後、針電極を実験動物(イヌ)の前胸部5カ所に装着した。マルチカーディナVCM-3000(フクダ電子)を用いて心電図を加算平均し、(1)房室伝導時間(AVCT)、(2)QRS持続時間(QRSD)、(3)QRS総平均電気量(RMST)、(4)QRS終末平均電位量(RMS_<40>)を測定した。左右星状神経節を1%キシロカインにてブロックし、その前後で上記の諸量の変化を調べた。 【結果】QRSDは左側星状神経節ブロックにより、94msecより、平均99msecに増加した。右側星状神経節ブロックを追加するとさらに平均105msecまで増加した。AVCTは左側星状神経節ブロックにより24msecから平均31msecまで増加した。しかし、右側星状神経節ブロックの追加により平均27msecまで減少した。RMS40は左側星状神経節ブロックにより39.6μVから平均18.7μVまで減少した。しかし、右側星状神経節ブロックの追加では平均21.5μVと回復傾向を示した。一方、RMSTは有意な変化を認めなかった。 【考察】星状神経節ブロックでは活動電位総量は不変であった。しかし、AVCTは左側星状神経節ブロックで延長し、両側星状神経節ブロックではやや延長した。心室内伝導時間は左側星状神経節ブロックでやや延長し、両側ブロックではさらに延長した。興奮の局所的興奮性は、左側星状神経節ブロックで高まり(RMS_<40>の低下)、両側星状神経節ブロックではやや高まるにとどまった。(RMS_<40>のやや低下)。このことは、片側、両側とも星状神経節ブロックは心室内伝導時間を延長するが、一方、片側性のブロックの方が、興奮の局所不均一性が高まることを示している。また、両側の星状神経節ブロックが局所の興奮性の不均一性を抑える効果のあることは、難治性不整脈が交感神経緊張不均衡に由来する場合、他側の星状神経節のブロックないし切除が抗不整脈効果を有する可能性を示唆するものと考えられる。 【結論】(1)星状神経節ブロックで、AVCTの増大、心室内伝導時間の延長、局所的興奮の不均衡性の増大がみられた。(2)左の片側ブロックでは、AVCTの延長と局所的不均衡性はより増大した。
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