研究課題/領域番号 |
04807098
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研究機関 | 山梨医科大学 |
研究代表者 |
吉井 新平 山梨医科大学, 医学部, 助手 (60166907)
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研究分担者 |
毛利 成昭 山梨医科大学, 医学部, 助手
神谷 喜八郎 山梨医科大学, 医学部, 助教授 (90111509)
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キーワード | Aortic arch / Aortic arch movement / Turbulence of arch flow / Cine MRI / Aging of the arch |
研究概要 |
胸部大動脈瘤や解離性大動脈瘤の発生力学に関し、大動脈弓部の三次元構造における変形が深く関与している可能性を明らかにしてきた。今回MRIにて左室を含めた大動脈弓の三次元構造を健康成人(20〜39歳)と健康中年(40〜59歳)、老人(60歳〜)の3群間で比較し血流が弓部に及ぼす影響と構造上の変形との関係を推定しうるか、検討した。 健康成人13人(22〜32歳、男7人、女6人)、大動脈弓に疾患のない中年群11人(42〜57歳、男9人、女2人)、及び老人群17人(61〜82歳、男8人、女9人)を同意を得た上で対象とした。使用したMRIは横川メディカル社製Resona(0.5テスラ)にてSE法T1強調10mmスライスにて胸部横断、冠状断像を撮影、これらを実物大立体像化し、1)頭側より見た大動脈弁と上行大動脈最右側を結ぶ直線、ここより横行弓部頂上にいたる直線のなす角(X角)2)同じく上行弓部の最右側と横行弓部にいたる直線とここより下行弓部にいたる直線のなす角度(Y角)3)左室心尖部と大動脈弁を結ぶ直線と大動脈弁と上行大動脈最右側を結ぶ直線の空間上でのなす角(Z角)を甲斐法にて求めた。次に4)Cine-MRI法にて横行弓部の横断像を得、大動脈壁の心拍による動きと方向を計算し、5)2重の斜位像により大動脈弓部の縦断像を得、大動脈弓部の最小曲率半径を求めた。 1)X角は、成人で48.1±6.9度(N=10)、中年で39.0±7.3(N=3)、老人で36.0±18.2度(N=11)。2)Y角は、成人141.3±10.4度(N=10)、中年で145±5.2(N=3)、老人143.4±10.0度(N=11)。3)Z角は、成人175.4±2.9度(N=10)、老人143.4±4.0度(N=11)4)横行弓部中央で心収縮による血流のため、左前側方を中心として同方向へ大動脈壁が移動した。移動量は、成人では5.5±0.5mm(N=10)、中年で5.1±0.2mm(N=3)、老人では4.3±0.5mm(N=11)で、老人群でやや移動量が少ない傾向が見られた。5)大動脈弓部の曲率半径は、成人で20.0±6.4mm(N=10)、老人群で33.0±6.4mm(N=11)で老人群で回転半径が有為に増大していた。 MRIは、無侵襲で正確な三次元情報や血流を捉えうる方法であり、加齢による変形をプレリミナリーに検討したところ、老人ほど曲率半径は増大し、左室長軸と上行大動脈のなす角度は急峻となる傾向や、横行弓部の左前側方運動などが捉え得た。今後これらの原因を含めMRIで血流動態をより詳細に、多人数で検討し、瘤や解離発生機序の解明を行っていく予定である。
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