研究概要 |
神経損傷に対する治療法として脊髄移植が考えられるが、臨床的には、脊髄損傷に対して有効な治療法として、急性期のメチルプレドニゾロン(MPSS)大量療法が知られている。その損傷部位における様々な効果は実験的に確認されているが、損傷の遠隔部の中枢に対する作用は知られていない。そこで脊髄損傷モデル遠隔部において認められるアトスロサイト反応、ミクログリア反応、bFGF反応を観察し、各グリア反応に対するMPSS大量療法の影響を観察、検討した。 実験:NASCIS-2のプロトコールに基づき、MPSSを静脈内投与とした。対照群には生理食塩水を投与した。損傷72時間後、潅流固定し、GFAP(アストロサイト),OX-42(ミクログリア),bFGFのモノクローナル抗体を使用し免疫組織染色を行い、形態学的差異を比較、検討した。結果:後索核におけるアストロサイトの反応は、生食投与群と比較しMPSS投与群で増加していた。ミクログリアの反応は両者に明らかな差異はみられなかった。MPSS投与により、従来の報告からアストロサイト,ミクログリアの反応性は低下すると考えられたが、アストロサイト、ミクログリアの反応性は投与後も維持され、bFGF反応も維持されていた。後索核には反応性アストロサイトは増生が認められた。このことから、MPSS大量療法は損傷局所だけでなく遠隔部中枢に対しても作用し、グリアから放出される神経栄養因子によって神経保護、機能維持、再生促進に関与している可能性が示唆され、神経損傷、神経移植時に有効であると推測された。
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