実験動物はラットを用いた。ネンブタール全身麻酔下に両側大腿動静脈にPE-50カテーテルを留置し、気管切開、チューブ挿入後人工呼吸管理を行った。頚部皮膚正中部を切開し、両側頸動脈、左頸静脈を確保、右頸静脈内にはPE-50カテーテルを頭蓋内方向に約1cm挿入し固定した。頭頂部皮膚切開した前頭部に直径2mmの骨窓を設け、複合電極(水素クリアランス式組織血流メータ電極、pHメータ電極、熱電対電極)を左前頭葉皮質内に刺入した。以下処置前、両側頸動脈結紮後、加えて脱血による全身血圧の低下(収縮期血圧60mmHg)、20分後に左頸静脈を結紮、右頸静脈より自家動脈血を逆行性に脳内に注入(前年度は2.5ml/minの注入量であったが、今年度は5.0ml/minの注入量)を行った。連続的に局所脳血流量(1CBF)、局所脳pH(1pH)、局所脳温(1Temp)を測定し、前年度の実験結果と比較した。結果、処置前の全身血圧(SABP)は142±18/104±14mmHg)、1CBF=70.4±17.8(ml/100g/min)、1pH=7.4±0.1、1Temp=37.7±0.2(℃)であった。頸動脈結紮後はSABP=182±21/148±18、1CBF=17±12、1pH=7.26±0.11、1Temp=34.7±1.4となった。脱血後はSABP=60±4/41±3、1CBF=3.5±1.4、1pH=7.18±0.09、1Temp=34.4±1.3となった。20分後に5.0ml/minで逆潅流療法を行うと、SABP=70±10/48±9、1CBF=21.5±10.7、1pH=7.35±0.05、1Temp=36.8±0.9であった。これらの結果は2.5ml/minで逆潅流した前年度の値に比較し、若干悪化していた。脳静脈系の破綻、浮腫の助長などが考えられ、今後の検討課題であった。
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