前年までに慢性関節リウマチ(RA)の関節液中に変形性関節症(OA)に比べて有意に高濃度のSubstance P(SP)が存在し、その濃度は関節内の炎症の重症度と相関すること、さらに、その由来として関節腔内に存在する知覚神経終末のほかに、滑膜中の浸潤細胞がSPを産生している可能性について報告した。このことを証明するために、SPの前駆体である、preprotachykininのmRNAのRA滑膜における発現をin situ hybridization法により確認したが、今年度はRA、OA滑膜培養細胞を用いて実験を行った。滑膜組織は手術時採取し培養実験に使用した。実験開始後、1週間-10日間で細胞はconfluentに達したが、初代培養細胞は、マクロファージ様細胞、樹状様細胞、線維芽様細胞等の種々の細胞が混在していた。しかし、その後、継代培養を続けると、ほとんどの細胞が線維芽様細胞に置き換わってしまった。新鮮な培養液に変換し、48時間後、これら培養上清中のSPをラジオイムノアッセイを用いて測定した。その結果、RA初代培養上清からは、SP様免疫活性が検出されたものの、RA6代培養上清、OA培養上清からはSP様活性は検出されなかった。このことより、RA滑膜中細胞におけるSP産生にはマクロファージ等の種々の細胞の存在が重要であることが示唆された。今後、このSP産生細胞のさらなる特徴の解明と種々のサイトカインやニューロペプタイドとの関連について研究を進めていく方針である。
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