呼吸不全症の一因子として注目される横隔膜疲労の発症メカニズムとして、筋収縮に必要なエネルギー(ATPの水解により得られる)の需要と供給のアンバランスがあげられる。また‘横隔膜疲労を改善させる薬剤としてアミノフィリンがあるが、その作用機序は明確ではないし、効果自体もcontraversialな点がある。我々はアミノフィリンが横隔膜血流を上昇させることで好気的エネルギー代謝を改善し横隔膜疲労を軽減させるのではないかと考え、本年度の研究を計画した。エネルギー代謝は、核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて、無機リン(Pi)、フォスフォクレアチニン(PCr)α-、β-、γ-ATPなどの高エネルギーリン酸化合物を、経時的に計測し、評価した。対象は生後約6週のミニブタで、横隔神経ペーシングにより横隔膜疲労を作成したin vivoのモデルを用いた。生理的食塩水投与群とアミノフィリン投与群(10、20、40mg/kg)に分け、各群において横隔膜機能の指標としての経横隔膜圧較差(Pdi)、高エネルギーリン酸化合物、細胞内pH(pHi)および横隔膜筋電図を測定した。結果として、アミノフィリンは用量依存性に横隔膜疲労を改善することが判明した。しかしアミノフィリンの有効性が常に見られたのは、40mg/kg投与群においてで、血中濃度では、35-40mg/kgのレベルであった。アミノフィリンはエネルギー代謝改善の指標とされるPi/PCrの減少と関連があったが、横隔膜筋電図、ATP、pHi、横隔膜血流に影響を与えなかった。結果として、アミノフィリンは血流改善とは別の機序で、エネルギー代謝を改善し横隔膜疲労を軽減させることが示唆された。
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