我々は子宮内感染が存在する羊水のサーファクタント濃度が高く、また最近、子宮内感染を合併した妊婦から出産した児にRDSの発症が少ないことが報告されている。 そこで我々は子宮内感染が胎児肺の発育に及ぼす影響を検討するために以下の2系統の実験を行なった。(1)妊婦16日令のラットを用いて子宮内感染のモデル(妊婦子宮の一端に浸透圧ポンプを装置し、これよりエンドトキシンおよび各種サイトカインを子宮壁と卵膜の間に注入する)を作り摘出した胎仔肺について肺サーファクタント(肺サ)アポ蛋白のmRNAの発現促進の有無を検討すること。(2)妊婦26日令の妊婦家兎胎仔の肺切片を培養しエンドトキシンおよびサイトカインを培養液に添加したとき[methyl-^4C]choline chrolideのサーファクタントの主成分であるphosphatidylcholine(PC)への取り込み量を検討すること。(1)および(2)の研究結果を以下に記す。(1)グラム陰性菌の細胞膜を形成するLPSの投与、および子宮内感染症を発症した羊水中で高値を示すlL-6、lL-8、およびTNF-αの持続投与においてコントロールに比較しアポ蛋白mRNAの強い発現が認められた。(2)LPSを母体に静注することにより、chorineのPCの取り込み量は著明に増加しほぼ成熟胎仔である妊婦28日目のそれに匹敵するものであった。しかし、LPSを培養液に添加してもchorineからPCへの取り込み量には変化は認められずLPSの胎仔肺への直接作用は認められなかった。次にlL-6を培養液に添加したところchorineのPCへの取り込み量は無添加(コントロール)に比べ有意に増加すことが判明した。以上より、子宮内感染合併症妊婦では胎児にとって感染という危険はあるものの胎児肺成熟(肺サの合成能)は促進される可能性が示唆された。このことは子宮内感染合併早産妊婦の管理の上で極めて重要な所見といえる。
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