パターン刺激による網膜電図(PERG)の網膜神経節細胞由来説を検証するためにネコで以下の研究を行った。まず極めて微弱なPERG電位(約1〜3μV)を捕捉するたの電算機プログラムを開発した。次に麻酔方法がPERGに及ぼす影響を調べ、人工呼吸ー全身麻酔に依らずとも安定したPERGが記録されることを見出した。上記の準備によって、知る限りのPERGの動物実験に関する報告の中では、比較的低い平均輝度(103.5cd/m^2)および低いコントラスト(93.2%)においても安定したPERGおよびパターン刺激によるVEP(PVEP)の同時記録が可能となった。 視神経乳頭周囲の網膜凝固前では調べた6眼のすべてでPERG、PVEP、閃光刺激によるERG(FERG)およびVEP(FVEP)が記録された。乳頭周囲に対してアルゴンレーザー光凝固を極めて密に施行した2眼では凝固後2週間を経ても対光反射は障害されず上記諸応答のすべては保存されていたので、アルゴンレーザー光凝固は網膜神経線維層を十分には破壊し得ないことが判明した。乳頭周囲に高周波熱凝固を施行した4眼のすべてで凝固後1週目で直接対光反射は消失または極めて減弱したので高周波熱凝固は網膜神経線維層を破壊したと考えられた。熱凝固後1週目では4眼すべてでPERGおよびFERGは保存されFVEPは減弱していたものの認められた。PVEPは4眼すべてで消失していた。熱凝固後8週目まではPERGは除々に減弱し、FERGは十分におよびFVEPは減弱するものの保存され、PVEPは消失したままであった。これまでの結果より、PERGとFERGとは異なる起源を有することが示唆されたが、網膜神経節細胞に由来するか否かは判明していない。さらに眼数を追加するとともに、網膜の病理組織学的変化が完成するまで約4ヶ月を要するといわれているので、一層の長期経過観察後病理組織学的検索を加えて報告する予定である。
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