研究概要 |
本研究では、EGF受容体を多量に発現しているA-431ヒト類表皮癌培養細胞を用いて、P_2プリン受容体とEGF受容体との間の細胞内情報伝達系を介したクロストークの存在を明らかにすると同時に、本細胞のP_2プリン受容体の機能発現にG蛋白質が関与している可能性を調べる。さらにP_2プリン受容体は現在のところ単離されておらずその化学構造等は明らかではない。したがってこの点を明らかにするため本受容体の光アフィニティ標識を行い本受容体の単離ならびに部分構造の決定を試みる。 平成4年度はP_2プリン受容体精製の第一段階として重要である受容体蛋白質の可溶化条件を検討し、可溶化後の受容体蛋白質の光アフィニティラベルの可能性について調べた。 種々の可溶化剤を用いてA-431細胞膜を可溶化後、本容受体の光アフィニティ標識剤である〔^<32>P〕3'-0-(4-benzoy1)benzoylATPを用いて試料を光アフィニティ標識し、種々のヌクレオチドおよびアナログの受容体に対する特異性を調べた。その結果、分子量約45,000の蛋白質の光標識がATPのみならず、UTP,AMPPNP,およびATPγSによって拮抗された。この光アフィニティ標識の特異性は、カルシウム上昇、カルシウムインフラックスなどの細胞内細胞内情報伝達系を惹起させるP_2プリン受容体のヌクレオチドやそのアナログに対する特異性(参考文献参照)と酷似した。また、この蛋白質は最も一般的な可溶化剤であるNonidet-P40により効率的に可溶化できることが明らかになった。 参考文献:Hosoi,K.,Fujishita,M.,Sugita.K.,Kurihara,K.,Atsumi,T.,Murai,T.,and Ueha,T.:P2 Purinergic receptors and cellular calciium in A 431 human epidermoid carcinoma cells,American Journal of Physiology 262,C635-C643,1992.
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