研究課題/領域番号 |
04807145
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 哲治 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (00169153)
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研究分担者 |
高田 和彰 広島大学, 歯学部, 教授 (30029970)
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キーワード | 扁平上皮癌細胞 / 唾液腺腺癌細胞 / 正常上皮細胞 / 脂質組成 / 脂質合成能 / 制癌剤 / Drug Delivery System / 膜疎水性 |
研究概要 |
我々は、口腔由来扁平上皮癌細胞と唾液腺由来腺癌細胞の種々の抗癌剤に対する感受性に大きな差があること、さらにその差は膜の受動輸送による抗癌剤の細胞内への取り込み能の差を反映していることを明らかにしてきた。これら癌細胞における薬剤の取り込みの差は細胞膜の脂質構造の違いに基づく細胞膜の疎水性の差を反映していると考えられる。そこで脂質を含まない無血清培養系を用いて口腔由来扁平上皮癌細胞、唾液腺由来腺癌細胞、口腔粘膜由来正常上皮細胞の培養を行いその脂質組成並びに脂質合成能の検索を行い以下の結果を得た。 1.扁平上皮癌細胞の全細胞画分と膜画分の脂質組成は、両画分とも全脂質の70%以上がリン脂質であった。一方、口腔粘膜由来正常上皮細胞、唾液腺由来腺癌細胞では両画分とも全脂質の50%以上がトリグリセリドと遊離コレステロールを中心とした中性脂質であった。 2.扁平上皮癌細胞においては合成された脂質の75%以上はリン脂質であった。一方、唾液腺由来腺癌細胞においては、合成された脂質の50%以上は遊離コレステロールとトリグリセリド等の中性脂質であった。 3.正常上皮細胞の分化にともない、中性脂質のうち特に遊離コレステロールの合成能が上昇した。 これらの結果から、扁平上皮癌細胞と唾液腺由来腺癌細胞の脂質組成と脂質合成能は大きく異なり、扁平上皮癌細胞の膜の脂質組成は腺癌細胞のそれに比べて疎水性がより高いことが考えられた。したがって、親水性の制癌剤であるシスプラチンや5-FUは扁平上皮癌細胞には取り込まれにくいといういままでの研究結果をうら付けるものである。
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