研究概要 |
これまで検討してきた基礎的成果を基に,その有機合成への応用を目的として(-)-Yellow Scale Pheromone(きまるかいがらむしの性フェロモン)の立体選択的合成を検討した。このものの合成は、今日まで数グループで研究されてきたが,立体選択性がなかったり,合成工程が非常に長いなど多くの問題をもっている。我々は,立体選択的に合成したジエンヨウ素化合物をt-ブチルリチウムで処理し,リチウム塩とした後,キラルアルデヒドを添加,続いてTHFで希釈するだけで図に示された四つの反応[i)ハロゲン-リチウム交換反応,ii)付加反応,iii)8員環形成反応,iv)シグマトロビー転位を経由する環拡大反応]が一つのフラスコ内で進行し,Z-二重結合を持つ10員環中間体を一挙に与えるというものである。このようにして得られた中間体は,環元的脱SCO反応,続くアセチル化によって目的化合物を高能率で与えるというものであり,ユニークな合成法である。
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