研究概要 |
本年度の研究では,当研究代表者らが既に発見しているフェニルグリオキサール(PGO)試薬を基盤として,グアニン,そのヌクレオシド及びヌクレオチドの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)におけるポストカラム蛍光誘導体化反応の諸条件について検討し,この方法を生体試料に適用した.また,PGOの類似試薬を合成し,より高感度な蛍光試薬を見出した. 1.PGO試薬はそれ自身無蛍光性であるので,グアニンヌクレオシ(チ)ド類のHPLCにおけるポストカラム蛍光誘導体化検出反応に適用可能であった.核酸塩基及びヌクレオシ(チ)ドを逆相HPLCによって分離したのち,そのカラム溶出液(pH 6.0)にPGO試薬を導入し加熱(80℃,約24秒)すると,グアニン含有化合物のみを選択的に高感度検出できた.検出下限(S/N=3)は3-10 ピコモル/HPLC注入量であった.この方法により,生体試料(ヒト赤血球)のグアニンヌクレオチド類を容易に計測することが可能であった. 2.PGO試薬のベンゼン核にメトキシル基やメチレンジオキシ基などの電子供与性の官能基を導入することによって,より高感度な蛍光試薬を開発した.検討した4種のアルコキシアリールPGO試薬は,いずれも穏和な反応用条件でグアニンヌクレオシ(チ)ド類と反応し,蛍光体は逆相HPLCによって相互に分離できた.中でも,3,4-メチレンジオキシPGO試薬は,迅速かつ穏和な反応条件[37℃,5分間,pH 7.0]により,グアニンヌクレオシ(チ)ド類を蛍光体に導き得た.この場合,PGO試薬よりも約4倍検出感度を高めることが可能であった.
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