研究概要 |
B型肝炎ウイルスの遺伝子の一つで、肝癌発生に関連していると考えられているpX遺伝子(以下HBx遺伝子)を挿入しにトランスジェニックマウスに、ホスホロサイオエイトオリゴマーをHBx遺伝子の一部に相補的配列にしたアンチセンス1(HBx遺伝子中央付近でGC含有率の高い部位を標的)、アンチセンス2(翻訳開始部位付近)を作製し実験を行った。 アンチセンス1実験では、マウス28生日より10週間、3回/週でオリゴマーを腹腔内に投与した。1回投与量は1mgとし、アンチセンス投与群2匹、センス投与群1匹、無処置群1匹とした。10週後、肝組織を検索したところ、初期病変である空胞変性肝細胞集合は上記4匹のマウスすべてで同様にみられ、アンチセンス効果は認められなかった。オリゴマー投与群では成長障害などの副作用はみられなかったが、肝組織で門脈周囲に炎症反応が認められ、オリゴマーの作用と考えられた。 28生日からの投与開始で効果が認められなかったので、より早期からの投与を検討した。7生日から0.2mg/回の3回/週を1週間、その後14生日より0.5mgとしたところ、21生日以降にオリゴマー投与した3匹に成長障害が認められ、死亡した。そこで14生日からの投与とし、0.2mg/回、3回/週を2週,0.5mg/回,3回/週を1週、その後第35生日より1mg/回,3回/週で5週間投与したところ成長障害も認められず、70生日に組織を検討した。アンチセンス投与群2匹のうち1匹に組織変化がセンス投与群、無処置群に比較し軽微であり、RNAレベルでも低値であった。副作用と思われる組織変化はこのプロトコールでは認められなかった。今後、標的mRNAを変化させたり、投与プロトコールを変更し、より多数の匹数のマウスを検討する予定である。
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