B型肝炎ウイルス遺伝子HBxを挿入したトランスジェニックマウスを用いて、ホスホロサイオエイトオリゴマー(S-オリゴ)アンチセンスの効果を検討した。昨年の報告で述べたように投与開始をマウスの出生後いつ出来るかをまず検討した。あまりに生後早期(3週生日)にS-オリゴマー1mg腹腔内投与を開始すると、成長障害が見られたため、漸増法にて週3日投与を行なったところ、成長障害や肝臓組織内の細胞浸潤など毒性は認められなかった。この実験条件でHBxに対するS-オリゴアンチセンスを投与されたマウスではセンス投与マウスに較べて、HBx遺伝子の発現が抑えられていた。免疫組織学的検討でもHBx蛋白は減少しているように見受けられた。 更に、アンチセンス効果を確かめるために15週生日より1週間連日投与した。投与終了後すぐに解剖し、肝臓より抽出したRNAを用いてRT-PCR及びS1マッピングにて検討した。アンチセンス投与を受けた2匹のマウスではセンス投与マウス及びコントロースマウスに比較して、HBx遺伝子発現が明らかに低下していた。HBxは自分自身の遺伝子発現(DNA→RNAの転写)をHBx蛋白によってコントロールされているので、アンチセンスによるHBx蛋白の生成の抑制があればHBxのmRNAも減少すると考えられる。実際、アンチセンス投与を受けたマウスはHBxの遺伝子発現が蛋白レベルでもmRNAレベルでも明確に抑制を受けていた。このことは、生体内でのアンチセンス効果を臓器特異的に認めたこととなる。 今後、更に既に出生1年以上経過して肝癌を発癌しているマウスで癌増殖抑制が見られるかを検討していく予定である。
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