研究概要 |
病態時におけるステロイドホルモン分泌異常機構を解明するためには、SI標識ステロイドを投与し、投与由来と内因性ステロイドの挙動を区別して同時に追跡し、注目するステロイドの体内動態が正確に把握できれば、分泌機能に問題があるのか、あるいは代謝・排泄機能に問題があるのかを明らかにできる。本研究の目的は、内因性ステロイドホルモンであるコルチゾール、コルチゾンの体内動態をSIトレーサー法により正確に把握し、病態の鑑別、重症度や予後に関し有用な情報を得ることにある。更に、治療に供されるステロイド剤の投与量は一般に微量であり、SI標識体を内部標準として用いるGC-MS法により、生体内動態に関する詳細な検討を行なうことにある。 この目的のため、コルチゾール-d_5、コルチゾン-d_5を内部標準として用いるGC-MS法による血中コルチゾール、コルチゾンの同時定量法を開発し、精度・再現性よく高感度の同時測定を可能にすることを明らかにし(J.Chromatogr.1992)、さらに、コルチゾール-d_5投与時、外因性および内因性コルチゾールを区別しながらGC-MS法により測定するに際し必要となる内部標準として、コルチゾール-d_9の合成に成功した(Steroids,1992)。また、プレドニゾロン-d_4、プレドニゾン-d_4を合成し(J.Labelled Compd.Radiopharm.,1992),コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾンのGC-MS法による同時定量法を開発した(J.Chromatogr.,1992)。また、生後1歳2カ月でネフローゼと診断され、その後10カ月にわたり合成副腎皮質ステロイドプレドニゾロンを投与されていた患者につき、プレドニゾロンおよびその代謝物プレドニゾン、内因性ステロイドコルチゾール、コルチゾンの血中濃度を同時に把握し、投与されたステロイド剤の薬物動態のみならず、ステロイド離脱時の内因性コルチゾール濃度の変化を明らかにし、副腎機能をモニターしながらステロイド療法を適切に進めることの重要性について検討した。
|