本年度は研究計画に基づき、1.わが国における精神分裂病患者の社会復帰へ向けての看護援助に関する文献の検討、2.精神科医療施設に入院中で、早期から社会復帰へ向けての看護援助が行われている精神分裂病患者2事例に対する看護ケアの参加観察を行った。 1.文献の検討結果 日本における精神分裂病患者の社会復帰に向けての看護援助に関する文献を、最近10年間のものについて検討した。その結果、精神保健法が制定されて5年目を迎える現在の日本では、精神分裂病患者に対して社会復帰を促す働きかけが多くの入院施設で始められ、その効果が報告されつつある段階であることがわかった。文献からは、現状のわが国では入院中に関わった看護婦が継続して関わることによって、生活ベースを徐々に地域に移す方法が多く実践され、効果的であることが示唆された。 2.精神分裂病患者の社会復帰へ向けての看護援助の参加観察 調査時点で精神科医療施設に入院中で、社会復帰へ向けての看護援助が行われている精神分裂病患者2事例に対し、VTRを用いた参加観察を開始し、現在も継続中である。 この間、提供された看護ケアを質的に分析した結果、(1)関係性を媒介とした患者の社会復帰へ向けての自己決定の援助および強化、(2)具体的な生活技術の教育・指導、(3)自己認知を含む病気の認識とそれへの対処方法の指導、(4)生活基盤の確保、など患者への直接的援助の他に、その援助を側面的に支えるものとして、(1)地域支援ネットワーク作り、(2)医療チームの調整などの項目が抽出された。また、以上の看護行為に一貫するものとして、患者を包括的に観察・査定する機能と、それをもとに、医療チームのイニシアチブをとるケース・マネジメント機能が明らかにされた。 さらに観察を継続し、項目の精選と下位項目の抽出を行いたい。
|