HTLV-Iは成人T細胞白血病(ATL)や〓性脊髄麻痺(HAM/TSP)を起こすヒト・レトロウイルスで、本邦では九州、沖縄がその高浸淫地域である。最近、九州各地とくに南九州において、HTLV-I抗体陽性者でATLやHAM/TSPを発病していない無症候キャリアの中に、眼内に、炎症病変(ぶどう膜炎)を伴う症例が多数報告されている。これらの症例は眼科・全身的な検査で既知のぶどう膜炎の原因(ベーチェット病、サイコイドーシス、結核、梅毒など)が除外される、いわゆる原因不明のぶどう膜炎である。我々の行った予備研究で、(1)HTLV-I高浸淫地域(宮崎県都城市)では、原因不明のぶどう膜炎患者群に比べてHTLV-I抗体陽性率が有意に高く、とくに成人若年者(20-49歳)では極めて高い、(2)このHTLV-I抗体陽性者のぶどう膜炎は、ベーチェット病、トキソプラズマ症など既知のぶどう膜炎とは異なる眼科的臨床像を呈する、(3)HTLV-Iぶとう膜炎70例中12例(17%)の高率にバセドウ氏病の既住歴があり、バセドウ発症3ヶ月〜10年後にぶどう膜炎を発症していたことなどが明らかとなった。今年度はHTLV-Iぶどう膜炎とバセドウ氏病との関係を明らかにし、その患者数、罹病率、病態生理、治療法、予後を検討した。
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