研究概要 |
1.sialyl-Le^xについて。 (1)sialyl-Le^xは、健常人骨髄のCD34陽性細胞(造血幹細胞)には発現せず、CD34陽性骨髄性白血病芽球に高率に発現していることを見いだした(Blood,1992;Leukemia,1993)。最近、sialyl-Le^xは、IL-1等で刺激された血管内皮細胞に発現するELAM-1(endothelial-leukocyte-adhesion-molecule 1)のligandであることが判明している。骨髄性白血病芽球は、IL-1等のリイトカインを分泌することが知られているので、白血病芽球周囲の血管内皮細胞にはELAM-1が発現している可能性がある。その場合、sialyl-Le^xを発現したCD34陽性白血病芽球は、ELAM-1を介して内皮細胞に接着している可能性が推測された。内皮細胞等のstroma細胞と接着した白血病芽球は、安定した増殖を示し、また抗癌剤等の薬剤に抵抗性を示すかもしれない。 (2)sialyl-Le^xは、健常人のリンパ球には発現していないが、CD10陽性急性リンパ性白血病芽球に高率に発現していた。健常人骨髄CD10陽性細胞(B前駆細胞)におけるsialyl-Le^xの発現を検討したところ、健常人骨髄CD10陽性細胞はsialyl-Le^xを発現していることを見いだした(Leukemia Research,in press)。 sialyl-Le^xは、健常人CD34陽性造血幹細胞には発現していないので、B前駆細胞の段階で一時的に発現することが判明した。 2.sialyl-Tnについて。 最近、sialyl-Tnは、健常人骨髄CD34陽性細胞には発現せず、CFU-Eから赤芽球の分化段階までと、成熟B細胞と成熟T細胞の一部に発現していることが判明した。造血器腫瘍では、赤白血病、B細胞性悪性リンパ腫やB細胞性慢性骨髄性白血病、成人T細胞性リンパ腫白血病の細胞に発現していた。この抗原の役割は不明だが、何らかの接着因子として作用していることが推測された。
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