高分子膜のガス透過の測定装置の原理を、重ね着した衣服の透湿性の測定に応用して、シミュレーターを作製し、重ね着層での透湿性について検討を行った。 水蒸気は水蒸気圧の高い方から低い方へ移動するから、一般に、肌と肌着の空間の水蒸気圧が低ければ発汗が容易になり快適であると考えられる。このシミュレーターを用い、下部から水蒸気を上昇させ、繊維素材による層間水蒸気圧がどのように異なるのか、まず20℃の環境下で温度湿度をダイナミックに測定し考察した。その結果、吸湿性が高いものほど層間水蒸気圧は低くなり、透湿性よりも吸湿性の方が層間水蒸気圧に大きな影響をおよぼすことが明かとなった。 さらに、-15℃の低温環境下で水蒸気を透過させた場合に、最外衣布に霜あるいは氷の付着することが認められた。この付着量は、内衣に吸湿性のよいものを用いたり、内衣の重ね枚数を多くすることによって、少なくすることができることがわかった。また、外衣の素材によっても、付着する霜の量や結晶形が異なり、ケバが有るものは、主としてそのケバの部分に水滴状に霜が付着し、平滑なものは角柱状に付着する傾向があることが明かとなった。 現在、この布に付着する霜について、その霜が成長していく経時的な観察、側面からの観察等を続行中である。
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