申請者は、ハチ毒ペプチドの種々の誘導体を合成する過程でその誘導体の中の1つがバフンウニ未受精卵の受精膜を上昇することを見出し、その誘導体を用いてウニ卵受精膜上昇機構が明らかに出来るのではないかと考え、萌芽的研究として本研究費を申請した。1.まず、第一に、そのペプチド誘導体がどのような細胞内反応を引き起こしているかを突き止めるため、いろいろな薬物をウニ卵内に注入するマイクロインジェクションの実験を計画した。その結果、ウニ卵の精子による受精ではどうもGタンパク質→ホスホリパーゼC→イノシトール三リン酸→細胞内カルシウム濃度上昇といった経路を介して受精膜が上昇しているらしいことを突き止めたが、ペプチド誘導体が引き起こす反応についてはまだ不明な点が多く今後の課題として残された。2.ある種の疎水性ハチ毒ペプチドが哺乳類の脳Gタンパク質を活性化することから、今回のペプチド誘導体の標的の候補のひとつとしてGタンパク質が考えられる。そこで、受精膜上昇の関与しかつ今回のペプチド誘導体によって活性化されるGタンパク質の探索・精製を行った。ウニ卵膜画分には、コレラ毒素でADPリボシル化される約49kDaのGタンパク質と百日咳毒素でADPリボシル化される約41kDaのGタンパク質とが存在することが存在することが判明した。過去の研究から、受精膜上昇に関与するGタンパク質はコレラ毒素感受性の方であると考えられるので、コレラ毒素により修飾をプローブとしてバフンウニ膜画分からGタンパク質の精製を行った。イオン交換、ゲル瀘過、ハイドロキシアパタイトなどのカラムを用いた結果、コレラ毒素により修飾されるタンパク質としてはゲル電気泳動上で単一のバンドとなるまでに精製された。現在、このGタンパク質が本当に申請者が見つけたペプチド誘導体によって活性化されるかどうかを速度論的に検討している。
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