1.制限酵素EcoRIについて---この酵素の部位特異的変異による改変は現在も成功していない。昨年7月に米国で行われた「制限酵素とメチラーゼに関する会議」に出席したが、制限酵素とくにEcoRI の改変は難しいという議論がかわされた。解決策として次のことを検討中である。 【.encircled1.】ベクターの選択。強力なプロモーターをもち、宿主細胞の増殖の間も制限酵素が発現されない系 【.encircled2.】宿主細胞の選択。有核の酵母細胞等を用いると、制限酵素は発現されても核内のDNAは切断されにくい。 2.制限酵素HindIIIの精製と部分的アミノ酸配列の決定---HindIIIをその生産菌より、硫安分画、ホスホセルロースおよびDEAE-セルロースクロマトグラフィーを用いて精製した。精製酵素はN末端が修飾されておらず、末端より12アミノ酸残基の配列を決めることができた。蛋白分解酵素V8による分解産物の配列は現在決定中である。これらの配列をもとにPCRで遺伝子の一部を増幅し、最終的に【.encircled1.】HindIIIおよびそのメチラーゼの遺伝子全体を単離し、その塩基配列を決定する。【.encircled2.】HindIIIを適当な宿主系で発現させ、その基質特異性の改変を目指す。 3.より高い活性を示す HindIII画分の分析---上記の HindIII精製のホスホセルロースクロマトグラフィーの際、2つの活性画分を得た。精製が容易なピークIに対しピークIIは活性が非常に高く安定であることが分かった。またDNAに対する親和性も高い。後者のほうが細胞内に存在する自然な形と思われるが、この画分の HindIIIは単独では活性が低いようである。今後は2つの存在様式をもつ事の生物学的意義を考察してみたい。
|