研究概要 |
大腸菌をはじめとしていくつかの細菌ではグルコースは2つのルートで細胞内へ取り込まれる。その1つはグルコース脱水素酵素によりグルコースをペリプラズム側で直接酸化し、グルコン酸として細胞内へ取り込む(GDH)系である。この系は呼吸鎖と連結し、膜エネルギーの形成に寄与する。もう1つは、グルコースをリン酸化して取り込むホスホヘランスポート(PTS)系である。本研究はこの2つの系が細胞の状態や環境によってどのように制御されるかを明らかにすることを最終目的とする。 本年度は以下のようにGDH系のグルコース脱水素酵素遺伝子(gcd)のクローニング、遺伝子精造解析および発現調節の解析を行なった。 1)gcd構造遺伝子およびプロモーターを含む上流領域をクローニングし、遺伝子構造解析を行った。その結果,構造遺伝子は2388塩基から成り、又、上流域にcAMP-CRPの結合部位が予想された。 2)アルカリ性ホスファターゼ遺伝子(pluA)とクロラムフェンコール耐性遺伝子(cm)をgcd遺伝子と融合させ,転写制御及び翻訳制御について解析を行った。その結果,酸素とcAMP-CRPにより,いずれも転写段階び正及び負の発現調節が成されていることが明らかとなった。 3)様々な培養条件の菌体からRNAを調製し,プライマー伸長法により、RNAの合成量を比較した。この結果は2)で得られた結果と基本的に一致し、gcd遺伝子の発現制御が転写段階び行なわれることが確認された。 4)調節因子の5′上流域への結合部位を決めるため,PCRにより種々の長さのDNA断片を調製し、phoAやcim遺伝子との融合体を作製し,発現調節の違いを比較した。その結果,CAMP-CRPはりで予想した部位へ結合することが明らかとなった。以上の結果より,GDH系はPTS系と同様にグルコースにより正に制御されていることとが示唆され、来年度は両系の遺伝子を用いたより詳細な解析をする予定である。
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