核融合炉の液体金属冷却における電磁流体力学的特性を調べる研究を低温で模擬実験できるようにすることを目的として、液体金属と同程度の高電気伝導度をもつナトリウムの液体アンモニア溶液(「準金属(pseudo-metal)」とよばれるナトリウムアミド)を取り上げ、これを伝熱流動実験に用いることを試みた。 流動実験装置は、縦置き円筒容器(内径6cm、深さ48cm)2個を内径10mm、全長2mの水平U字型管でつなぎ、その直接部長さ0.7mを内径3mmの流動試験部として、最高磁束密度1テスラの2つの電磁石(磁極面寸法180×860mm)の間に設置したものである。ガス加圧により一方の容器から他方の容器へ流体を流し、容器間の圧力差の測定により磁場印加部におけるMHD圧力損失を求める。準金属は、ガラス、石英、金蒸着面、ポリエチレン以外の材料(ステンレス鋼等)と接触すると化学的に不安定であり、材料(テフロン、雲母等)を腐食する。そこで準金属状態を安定に保つため接液部の材質にパイレックスガラスを選んだ。大気圧下でアンモニアを液化するために流動試験部を-32℃以下に冷却する。そこで流動試験部を入れた真空断熱鋼製容器内にフロロカーボン(HCFC-141b)を満たし、この冷媒を撹はんしながら投げ込み式冷凍機で冷却した。アンモニアガスはボンベから供給し、容器内で液化した後、金属ナトリウムを溶かした。蒸発・排気されるアンモニアガスは有毒であるため塩酸水溶液を通してダクトで屋外へ排出した。 アンモニアは蒸気圧が高く有毒である実験を慎重に進めており、現状では準金属の製造技術と安定性を確認し、容器間細管内の準金属の流動が磁場により抑制されることを示すデータを取得している。
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