教員養成大学学生の地理教育体験を調査した本研究では、愛知教育大学学生と奈良教育大学学生の二大学の事例ではあるが、それぞれの小・中学校時代の社会科学習体験が記憶として再現された。日本地図にイメージを記入する調査では、沖縄県の県境の誤認が著しく、また山形県も同様であった。世界地図調査でも、イメージの固定化は著しく、マスメディアの影響も考慮しても、将来教員になる予定の学生と資質としては、問題が指摘できる。 先進校の地理教育施設・設備の視察・調査の結果では、機器のOA化が進み、またその管理運営にいずれも優れた教員が当たっていることが分かってきた。個別の研究として、地理教員の資質として持つべき力として、フィールドワークに関する考察を行った。また、アメリカ合衆国で進められている地理教育復興運動についての研究も実施した。奈良教育大学に保管されていた郷土掛け地図についても、共同研究者の岩本により、発掘され、その目録が作成された。教育現場の設備状況についての簡単な郵送によるアンケート調査でも、現場の実態は悪化しつつあり、早急な設備機器の刷新が必要である結論を得た。 これらの調査によって本研究報告書(124ページ)を作成し、関係大学地理学教室及び附属図書館宛に二部ずつ、寄贈した。学校の「地理」に対するイメージにかかわる今回の研究によって日本の地理教育が果たしてきた足跡の内、国民の世界像形成には一定の寄与を果たしたと思われるものの、様々な問題点が指摘できた。今後の教員養成大学における地理教育カリキュラムの問題点が整理できたと考えられる。
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