高度好塩性古細菌であるH.halobiumから高塩濃度下でRNA合成を行うRNA polymeraseの精製を試みた。先年度はPolymin P処理後50mM KCl濃度で溶出させたfraction Iをブチルトヨパールとヘパリンアガロースを用いたカラムクロマトグラフィーにより酵素の精製を進め、得た部分精製酵素標品により若干の性質を調べたが、この酵素標品の回収率は約1%にとどまり、またその活性もきわめて不安定であり酵素の働きを充分解析することはできなかった。このことから本菌から安定した活性を有するRNA polymeraseを調整することが重要と考えられた。安定した酵素活性を持つ標品を得る試みとして第1に、PEI処理後3M KClで溶出される画分(fraction A)に含まれる酵素の精製を試みた。fraction Aを6M尿素処理した後再度PEI処理することで50mM KCl濃度で溶出される画分としてRNA polymeraseを得た。この画分を用いブチルトヨパール、ヘパリンアガロースによるカラムクロマトグラフィーを行うことで酵素を精製したが、得た部分精製標品も不安定でありその性質はかなりfraction I由来酵素に似ていたが同一酵素であるか否かを含め明らかにすることができなかった。そこで第2の試みとして本酵素を安定化させる因子の存在の可能性を検討した。fraction Aのハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにより0.2Mリン酸濃度付近に溶出されたタンパク質画分はそれ自体にRNA polymerase活性はないがfraction I由来の部分精製酵素標品の活性を調整後1週間経た後でも45%程度の活性が残っており、明らかに酵素活性の安定化に寄与していた。現在はこのタンパク質性因子の精製を進めている。
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