研究代表者らはこれまで英語学習不振児の出現を防ぐために様々な教育的介入を試みてきた。だが、数%の出現は防ぎきれなかった。英語学力差が書きことばの学習に起因するならば、その数%の多くが難読症児かもしれない。本研究はそのような隠れた難読症児を同定する試みであった。 まず、小学4年生125名を対象として「バンガア・ヒロシマ難読症診断検査」を実施し、8名(6%)が難読症児であるとするデータを得た。次に、中学2年生108名を対象として同様の個別検査を行い、難読症の存在を追求した。日英語の音読速度を従属変数、「診断検査」結果を独立変数として重回帰分析を行った結果、同検査結果が日英語音読速度に同等に関与していることが判明した。音読速度分布から5名が難読症児であることが示唆されたが、日本語音読では正規分布に近く、難読症児が同定しにくくなっていた。 さらに、難読症の原因究明のためゲシュウィンド仮説に基づき、全国から難読相談を受け、6歳から15歳の子どもの保護者250名にアンケート調査を実施し、85名から回答を得た。分析結果、59名の難読症児群は健常児に比べてアレルギー性失患などの免疫不全率が高く、非右利きの割合も高いことが示され、ゲシュウィンド仮説を支持した。 これら一連の研究によって英語を中心とした学習障害の最も不明瞭な部分に先が当てられ、今後の開拓への大きな展望が開けた。社会的な関心も高く、読み書きの研究にはずみがつき、優れた人材育成に大きく寄与する可能性が得られた。本研究の成果については、現在、国際誌に投稿審査中である。
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