本研究は文法獲得の過程を詳細に調査することによって、普遍文法と経験の相互作用の実態を明らかにしようとするものである。本研究では、特に日本語文法獲得初期を集中的に調査した。具体的には、3・4歳児を被験者とし、語順と格助詞などに着目した実験を行ない、基本的句構造の獲得状況を調査した。 昨年度の研究成果にもとづき、本年度はつぎの点を明らかにした。3・4歳時で、格助詞とそれ以外の助詞(後置詞)の構造的差異が理解されている。 昨年度と研究成果と併せて、3・4歳時で句構造に関する抽象的知識が獲得されていることを実証的に示すことができたと言える。それは、刺激の貧困による議論により、文法に固有な生得的制約としての普遍文法が機能しているとの立場に強い支持を与えることになる。また、句構造に関する知識には同時に日本語文法に固有な部分も含まれていることから、文法獲得における生後子どもが外界から取り込む経験の重要な役割も認めることができる。 今後の課題は、さらに年少の被験者を対象に本研究と同趣旨の研究を行うことと経験の性質と役割について一層の特定化を行なうことである。
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