本研究では、機能的言語の少ない発達障害児を対象に、その認知機能の開発と統合化を促進するための条件を、刺激・反応等価性の成立という観点から明らかにすることを目的とした。 【.encircled1.】重度重複障害児に、特定の絵カードを見本刺激として示し、単語選択を訓練し、ワープロによる単語作成に般化するかを評定した。その結果、絵カードと単語、および文字の対応は成立したが、単語作成には、各文字を時系列に対応させる集中訓練が必要であった。 【.encircled2.】単語記号による2語文構成反応が、見本刺激と比較刺激との間の距離を離しても成立するか、手話の表出により正反応率が上昇するかを検討した。その結果、手話が媒介反応として機能化するためには、それを自発させる手がかりの呈示が必要であった。以上の結果によって、反応等価性の成立には、各反応レパートリーの確立、および適切な文脈性刺激による制御が必要であることが明らかになった。 自閉症児について、特定の動画刺激を見本刺激として用いた条件性弁別訓練を行い、適切な音声言語表出を訓練し、動画刺激内の個々の刺激要素を、人物、動作内容、動作の方向、用いられる動詞、についてかえた場合、主語・目的語、各単語要素、その順序、助詞・動詞の使用が適切に変換されるをテストした。その結果、「○○が△△と□□をしました」いいった方向の逆転が含まれない映像、および、「○○が△△に□□をわたしました」といった方向を逆転した映像でテストされた場合でも十分な般化が見られた。一方、自分自身が映像の中に登場する場合や、「渡しました」「貰いました」のように2値の反応が必要とされる場合、般化が成立しなかった。これらの結果によって、動画刺激の動きに時間軸上で対応した刺激については般化が成立するが、全体を見本刺激とした場合、刺激等価性の成立に困難をともなうことが明らかになった。
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