ファジィ理論におけるショケ積分は、ファジィ測度を定量化する際に用いられる。ファジィ測度は評価基準値の相対化に有用な尺度であり、本研究においては加法的評価、代替的評価、補完的評価の基準値として採用した。平成4年度の研究においては、上記三種類の評価値をAHPモデルに組込み、交通計画学への適用可能性について考察を進めた。その結果、次のことが判明した。 (1)加法的評価は総合得点評価と類似しており、評価結果はほぼ一致した (2)代替的評価は長所重視型評価であり、計画案の優れた点を明示した。 (3)補完的評価は短所重視型評価であり、計画案の問題点を浮彫りにした これらの評価基準を用いてバス路線の評価を試みたところ、現実に即した、納得のいく結果が得られたので、さらに本格的な調査を進めた。すなわち対象バス路線の沿線環境の調査、バス停別乗降客数調査、バス停別利用圏域調査を行ない、さらにバスによる騒音や振動調査データの入手を図った。また当該バス路線はその設置をめぐって地域住民と行政当局、バス会社間で種々のやりとりがあり、問題を複雑にしてきた経緯がある。したがってこれら関係者から十分なヒアリングを行って、本研究で構築したAHPモデルのウェイトを調整した。研究の過程において現行路線に反対する住民から、研究成果の経過報告を求められたが、学術研究の立場から途中経過の報告をしない旨回答し、了解を得た。
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