土木計画の評価や意思決定法については、これまで多くの研究がなされ、種々のモデルが提案されてきた。しかしながら依然としてその結論が地域住民に正しく理解されず、日本各地で種々のコンフクリトが生じている。その一因として、地域住民の評価基準があいまいで、しかも一定でないことがあげられる。本研究はその点に注目し、評価基準のあいまいさをファジィ測度で表現し、ショケ積分によって総合評価する意思決定プロセスを確立したものである。 本研究の対象はある都市のバス路線変更に関わるものである。自治体がバス事業者に要望した路線が、地域住民の総意によらなかったことから紛糾が生じた。このため関係者は10年間にわたって交渉を続け、お互いの意見調整をとってきたが、合意を得るまでには至らなかった。このため合理的な評価法による判定を行うことになり、調査研究を開始した。 バス路線の評価モデルとしてAHPモデルを用いいることにし、次のような階層構造を設定した。 (1)評価者:バス利用者、バス路線周辺住民、バス事業者 (2)評価項目:バス停までの平均徒歩距離、バス停施設等の整備、騒音等の環境問題、バス路線による地価上昇効果、バス停利用圏の広さと形状、バス路線の交通安全 これらの項目に重みをつけるため、一対比較調査を実施し、ファジィ測度変換を行って、ショケ積分を適用した。 本研究による総合評価値を自治体、バス事業者、周辺住民へ提示し、意見を求めた。その結果、一部の住民から難色を示す声もあったが、大勢において本研究の結論は支持された。なお本研究が文部省の科学研究補助費によって実施されたことにより、周辺住民の信頼を獲得し、公正な結論を容認する背景になったことを特記する。
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