1.バス路線問題の経緯 広島町山手地区のバス路線変更をめぐる地域住民と行政当局の対応をよく理解するために年表を作成し、問題点を整理した。 2.交通現況調査結果 本研究においてバス停留所別に利用者数を調べ、さらにバス路線沿線の住宅において過去に調査した騒音、振動のデータを入手した。その結果、振動・騒音とも環境基準内であることが判明した。 3.ファジイ測度を用いたAHPモデルの構築 AHPモデルは意思決定支援モデルであり、複数の評価基準をもつ対象について総合的な評価を行うことができる。しかし評価項目の重みの和は1.0という強い制約があり、評価結果に妥当性を欠くことがあった。本研究ではこの点を改良するためにファジイ測度を導入し、新しいAHPモデルを構築した。このモデルは、総合評価を「平均値重視型」、「長所重視型」、「短所重視型」、の視点からとらえ、評価の立脚点から異なると、総合評価値も変動することを示した。 4.バス路線評価モデルの適用とその後の推移 問題になっているバス路線を評価するため、本研究で構築した評価モデルを適用した。その結果、現在のバス路線に反対している住民は、「短所重視型」でとらえ、行政は「長所重視型」で評価していることが明らかになった。したがって広島町としては、現在のバス路線に問題があることは認めつつ、将来の発展を展望したとき、望ましいバス路線は現在のルートであると判断し、町議会に報告した。議会においてもこの結論が支持され、バス問題は決着した。しかし、その結論を承認した町長は、再選を阻止されることになった。
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