本研究は、これまで製造業や建設業でその有効性を実証してきた品質機能展開の考え方を応用して、情報システムの構築運用における品質保証のための体系的方法を確立することを目的とする。 今年度は、当初の計画に従い、次のような方法の研究を進めた。 (1)まず、システムに対する要求を幅広い視野から把握して要求品質展開表としてまとめるための方法、 (2)システムにおける要求実現の度合を評価計測するための品質特性をまとめて品質特性展開表を作成する方法、 (3)要求品質と品質特性の対応関係を品質表とよぶマトリックスに表現する方法、 (4)システムをサブシステムへ階層的に展開し、サブシステムと要求品質の関係を検討する方法、 (5)システム開発の技術的課題・信頼性安全性の課題を抽出する方法、など。 以上の方法を「営業支援システム」と「SE教育システム」の2種の情報システムについて適用を試み、システム分析への有効性を確認した。特に、要求仕様の明確化、重要な要求品質の抽出、システム設計の課題の抽出などに有用である。 また、国際標準機構(ISO)によるソフトウェア品質保証システムの標準であるISO-9000-3や一般の品質システムの標準であるISO-9000シリーズについて検討した。 来年度は、開発プロセスの管理を充実させるための管理項目を抽出し、運用における管理方法を明らかにする方法などを研究し、これまでに研究してきたハードウェア・ソフトウェア製品の開発における品質機能展開の適用と比較して、その方法論上の相違を明らかにしたい。
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